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ハッカーで行こう!

秋山 博紀
CTO / 開発本部長
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こんにちは。株式会社Helpfeel CTOの秋山です。Helpfeel Advent Calendar 2023 -summer-の最終日を担当することになりました。2023年8月31日です。夏休みの宿題を思い出しながら書いています。

少し(というかかなり)気が早いですが、Advent Calendarですので今年を振り返ってみましょう。やはり3月2日の朝にChatGPT APIが公開された日のことが、鮮烈に思い出されます。その発表から8月中旬に当社で開催したHelpfeel Tech Conf 2023 Summerまで、一気に駆け抜けたような気持ちでした。

Helpfeel Tech Conf 2023ではキーノート「Helpfeel開発部のいまと未来」と題して、開発部が今後進みたい方向性について発表しました。発表では次の1年の目標として「ハッカー集団であり続ける」を掲げています。

ハッカーとは?

ハッカーについてはポール・グレアム『ハッカーと画家』を筆頭に、様々な書籍や文章で論じられています。当社では過去の議論を踏まえつつ、独自に「ハッカー」を定義したいと思います。今回、ハッカーの構成要素として、「テクノロジー」「アート」「デザイン」「クラフト」の4つを掲げました。ハッカーはこれら4つの要素すべてを持つ概念です。

ハッカー = テクノロジー ∩ アート ∩ デザイン ∩ クラフト

※楕円を斜めにすることでMECEな図になりますが、本資料ではベン図を簡略化しています。

それぞれの要素について、議論したいと思います。

ハッカーのテクノロジー

知識を持っているだけではハッカーと言えません。実用して初めてハッカーと呼ぶことができます。実用とは、実際に世の中に作用することです。自分の知識を武器に、世の中に作用することを喜ぶ人がハッカーだと考えています。知識があっても実用しない人はハッカーではありません。

一方で、経験を言語化し再現性を図ることも重要です。知識と実用の再生産に貢献することもハッカーの大事な要素です。

ハッカーのアート

自ら行使する作用そのものに対する美意識と情熱もまた、ハッカーの重要な要素です。表面的な審美性に限らず、外から見えない内部に至るまでの美しさも情熱を注ぐべきポイントです。特に『ハッカーと画家』においては、ハッカーと画家に共通するものとして情熱やひらめきを持つことが指摘されています。また、共感能力も重要な要素であると指摘されています。「観客を惹きつけるには、観客が何を必要としているかを理解しなくちゃならない。」

ハッカーのデザイン

「デザイン思考」という言葉があります。観察から始まりユーザーテストに終わる、デザインプロセスを定型化したフレームワークです。当社では逆にドッグフーディングが中心となる「自分汎用デザイン」という考え方を持っています。

デザイン思考・自分汎用デザインはどちらも、手法は違えど問題発見のためのフレームワークです。課題設定そのものを疑い、問題の根本に向き合うデザイナー的思考はハッカーにも求められるものだと思います。

ハッカーのクラフト

自らの創意工夫を仕事に反映させることも重要です。ヴァルター・グロピウスの『バウハウス宣言』からは、ハッカーにおけるクラフトマンシップのヒントを得られます。

バウハウスは世界初の現代的なデザイン教育を目的とした美術学校です。バウハウス宣言は「あらゆる造形活動の最終目標は建築である!」から始まります。クリストファー・アレグザンダーの『パタン・ランゲージ』におけるデザインパターンがソフトウェア開発に影響を与えたように、建築とソフトウェアには類似性が見られます。宣言の後半では、手仕事や手工に回帰することの重要性を説いています。

(中略)

建築家、彫刻家、画家、我々全員が、手工業に戻らねばならない!なぜなら、「職業としての芸術」は存在しないからである。芸術家と手工業者の間に本質的な差異はない。芸術家は、高められた手工業者である。天の恩寵は、彼の意思の彼方で、希なる光に瞬き、芸術は無意識に彼の手仕事から花開く。だからこそ、手工にかかる基礎は全ての芸術家にとって不可欠なものなのだ。そしてそこに創造的造形の源泉がある。

だから、手工業者と芸術家の間に尊大な壁を築いて、不当にも階級を区別するようなことはせず、手工業者の新しいギルドを結成しよう!建築と彫刻そして絵画のもつすべてがひとつの形となる未来の新建築を、ともに希求し、考案し、創造しよう。手工業者のあまたの手によって生まれたその新建築は、天空に向かってそびえることだろう。新たな来るべき信念が結晶した象徴として。

京都国立近代美術館『バウハウスへの応答』頒布資料より引用

建築を最終目標とした美術学校の創立宣言でありながら、どこかソフトウェア開発におけるハッカー文化にも通じるところがあるのではないでしょうか。自ら手を動かす行為=クラフトにより無意識に発露される芸術もまた、ハッカーには必要な要素です。

ハッカーで行こう!

ハッカーというものは、職業ではなくマインドセットであると考えます。ハッカー文化は技術者を中心とした文化ですが、当社ではハッカーの定義をエンジニア以外のあらゆる職種にも拡張可能な概念にしたいと考えています。

情熱と美意識を持って問題そのものに向き合い、知識を自らの手によって実用することが、ハッカーとして重要なことです。これはエンジニアに限らず、当社のメンバー全員が持っていてほしいマインドセットです。日常の業務に追われると、つい忘れてしまうところでもあります。私自身もふと立ち止まって、自分の日々の仕事がハッカーの名に恥じないか考えて行きたいです。

次の1年間はハッカーで行こう!

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